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 (23日、徳島独自大会 鳴門6―3徳島北)

 「鳴門とできる状況を楽しんで。しっかり頼むぞ」。徳島北の主将でエース、河野勇真(ゆうま)(3年)は、笑顔で後輩の秋元啓志(2年)をマウンドに送り出した。

 河野は県内屈指の好右腕。昨秋の県大会は26イニング2失点で、チームを初優勝に導いた。だが、この日は腰痛のため、控えに回った。オリジナル変化球「Yボール」のお披露目もおあずけとなった。

 「併殺を取れる球を」とコーチに言われて編み出したのが「Yボール」。勇真の頭文字を取って名付けた。スプリットよりも浅く握って、高速シンカーのように沈む変化球だ。

 コロナ禍のなか、自主練習に励み、「試合で使える球になってきた」と実感を得た。独自大会で試すことを楽しみにしていたが、腰に痛みが出始めた。病院で、医師にこのまま続けると腰椎(ようつい)にひびが入る「腰椎(ようつい)分離症」になる可能性を伝えられた。

 「高校で野球をやめるならともかく、彼には次のステージがある。その芽を摘むわけにはいかない」と住吉圭吾監督。「痛み止めの注射を打ってでも出たい」という河野だったが、甲子園につながらない大会でもあり、将来を考えて登板をあきらめた。

 試合中、エースは笑顔で声をかけ、三塁コーチにも立ち、仲間を鼓舞し続けた。チームは昨夏の甲子園出場校に食い下がったが、3―6で敗退。河野は「みんなに託したことに悔いはない。みんなの頑張りをみていて、このチームの主将で良かったと思った。この悔しさを忘れないようにしたい」と前を向いた。

 目標は大学で活躍して、プロに進むこと。いつか、テレビで「Yボール」を見せる。それがみんなへの恩返しになると思っている。(佐藤祐生)