〈はたらけどはたらけど猶(なほ)わが生活(くらし)楽にならざりぢつと手を見る〉――遺(のこ)した短歌から清貧な印象を持たれることも多い石川啄木。現在、dアニメストアなど25のサイトで配信中のアニメ「啄木鳥(きつつき)探偵處(どころ)」では、そうしたイメージを覆し、うそつきで見えっ張り、酒飲みで女好きな人たらしの歌人として描かれている。「素顔はさらにその奥にある」と見る歌人の山田航さんに、寄稿してもらった。
拡大するアニメ「啄木鳥探偵處」に登場する石川啄木(左)と親友・金田一京助。dアニメストアなど25の配信サイトで配信中。TOKYO MXでも再放送中。原作は『啄木鳥探偵處』(伊井圭著、創元推理文庫)。
(C)2020伊井圭・東京創元社/「啄木鳥探偵處」製作委員会
「啄木鳥探偵處」の啄木はケレン味たっぷりだ。常に一手二手先を読んで、芝居がかった言動をとる。もちろんフィクションの探偵だからなのだけれど、史実の啄木にもそういうケレン味は見受けられた。
アニメには啄木以外にも野村胡堂や吉井勇などといった明治の文士たちが登場するが、当時の文士という存在を、現代の文化人と同じに考えてはいけない。文学は当時の最先端ポップカルチャーだったし、文士たちはときに新聞にゴシップが書き立てられるような、今の芸能人に近い存在だった。
「清貧の歌人なんて噓(うそ)っぱち、啄木は本当は女好きで借金魔のダメ人間だった!」というたぐいのことを話の種として聞いたことのある人は多いだろうが、そのダメ人間エピソード自体が、実は意図的に振る舞って構築した自己演出だった可能性がある。
言語学者の金田一京助は啄木の…
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